伝えたかった

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酸素が足りなくなってきたのか瑠威の抵抗が弱くなってきた。 その時、 カザマ「貴様、瑠威に何をしている?」 民家の屋根から、風間の声が飛んできた。 ルイ「千景っ……離せっ!!!!」ドンッ オキタ「わっ……。」 渾身の力で僕を突飛ばし、逃げた瑠威は風間の方へ跳んだ。 カザマ「瑠威、あれ以上されてはいまいな。」 ルイ「うん。私が大人しくされてると思う?」 カザマ「ふっ……ならばいい。戻るぞ。」 ルイ「はいはい。じゃあな沖田。」 ………待って!! ガシッ 考えるより先に、体が動いていた。 そこらの岩や塀に足をかけ、瑠威のいる屋根に登った僕は、瑠威の手を掴んでいた。 ルイ「なっ……!?」 カザマ「貴様、どうやって!?」 瑠威も、風間でさえも驚いている。 でも今はそんなこと関係ない。 伝えなきゃ。僕の思いを。 オキタ「待ってよ!!…これだけ言わせて。僕は瑠威が!!」 ルイ「……黙って。」トンッ 瑠威が僕の首に、手刀をいれた。 正確に当たったそれは、僕の意識をさらっていく。 薄れゆく意識の中、瑠威の声が 「……………ごめん。」 そう言った気がした――――。 オキタ「瑠威っ!!」 手を伸ばす。跳ね起きる。 此所は、屯所の僕の部屋? 辺りを見回すと、枕元におにぎりと1枚の紙が置かれていた。 紙には、 沖田の気持ち、私も同じだよ。でも私はもう、新撰組じゃないから。 手刀、痛かったでしょ? ごめんなさい。 じゃあ。 大好き。 とあった。………明らかに瑠威だった。 オキタ「………っ…瑠威っ…」 ずっと堪えていた涙が溢れる。 やっぱり、君は優しすぎるよ。 握りしめた手には、まだ瑠威の温度が残っていた。 伝えたかった思いは、優しすぎる君には届かない。 Fin.
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