動き出した歯車

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暫くすると、 彼女が挙動不審な位慌てふためく様が 目を閉じていても感じ取れて、起きることにした。 「ん~あ、おはよぉ~」 なぁんて眠気眼をこすりながら微笑んで手首を軽く掴んだら 目の前の彼女は、硬直。 瞬きさえ出来てなかったと思う。 それが、一般的な反応だよね。 だって起きて知らない男性がいたんだもん、 そりゃビビるよ。 もしそんなん俺なったら、 ……その場から逃げだしちゃうかもしんない(笑 だって面倒くさいでしょう。 でも彼女、 喋んないで固まってるのはいいけど、 俺の事……、 ガン見。 あんまり見られるの慣れてないし照れるから ベッドの上でわざと大きく胡坐をかいて揺らしてやった 彼女、俯いて正座して 「…あ、の」 震える声で俺を見上げた彼女の歪んだ真赤な困り顔。 そんな顔をもっと見たくて 「何、その顔? 何にも覚えてませんって顔だね」 俺の言葉に目をパチパチさせて瞬きする彼女。 ピカソみたいな顔して、貴方誰ですか?って顔してるから、 契約書を取りあえず見せることにした。 契約書の内容を目にしたら 狼狽えて、見る見るうちに顔面蒼白。 面白いから、合鍵も貰ってた仲って事にもしちゃった。 もちろん、合いカギは嘘。 さすがに酔ってた彼女の鞄を詮索するのなんて気が引けるし。 ただ、どんなに逃げようとしても 俺からは逃げられないよって思わせたかっただけで。 でも。 全然伝わらなかったみたい。 焦点が合わない目でボーッと遠くを見ている感じ。 あのさ、俺の話…聞く気ないでしょ? なんだか苛々してきて 少し悪戯心が顔を出した。 「あ、そうか」 無理やり彼女の視界に入ればいいんだ。 頭を引き寄せて唇に軽く触れてみた。 「あれ、違った? おはようのチューが欲しくて黙って待ってたのかと思って、 してみたんだけど」 ちょっと今の言い分は、無理あるかな…って首を傾けたら、 「~んな訳あるかぁ!」 どすの利いた声で思わず叫び出す彼女。 やっと俺の話を聞いてくれる気になってくれたみたい。
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