動き出した歯車

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その日の夜、彼女がマンションに帰ってきたのを見計らって、 インターホンを鳴らした。 のに、 ……出ない。 な・ん・で・か・な? ピンポーンピンポーンピンポーン 連続で鳴らすのなんか初めてで。 インターホンの画面見えてるんなら早く開けろってば。 カッコ悪さに苛立つ気持ちを反映するかのような呼出音。 で、やっと出たかと思えば、 「あの、人違いみたいなんですけど。あんまり煩いと警察呼びますよ?」 って迷惑そうな声がエントランスに虚しく響く。 「……。」 はい? マジ、ふざけてんの? 呼出音の連打っ!!!!!!!!! 意地でも入ってやるからな!! それでも、 「……今警察呼んでますから」 冷やかな彼女の声。 ─ブチッ。 あくまで俺を入れない気ね? ふ~ん。 そっちがそんなんなら、俺は強行突破で行くよ? 「……もういいや、合鍵貰ってるから入っちゃうよ~? 郵便受けで部屋番号も分かっちゃったし」 単純な貴方に俺が負けるわけないんだからね。 待ってろよ? ちょうど建物に入っていくオッサンに便乗!! 意気込んで彼女の部屋の前に仁王立ち。 ドアをゴンゴンッと叩いて、 ドアが開いたかと思いきや。 「……。」 玄関 チェーンロックをしたまま 隙間から小さな顔だけ出して上目遣いで睨まれた。 …なに、それ。 チェーンロックをしたままって、完全に不審者扱いじゃん!! ヒデぇ!! 初めての扱いに凹む。。憤慨する気力もないし。 「ちょっと!近所迷惑になるからやめて!」 ……相変わらず鼻息荒いし。 かと思えば、 共用廊下を通り過ぎていくサラリーマンの視線でいきなり 右腕を引っ張って玄関へと押しいれられる。 「……。」 そんなら、初めから中に入れろっての!! 外寒いんだからさ。 「……で?私に一体何の御用ですか?」 あのさぁ、、 「冷たいなぁ、まずは玄関先ではなくて中に入れてくれない? 何か飲み物でも出してくれるのがお客様を招き入れる相応の対応 ってやつですよね?」 俺、今まで外で貴方の事ひたすら待ってたんですけど。 でも なんかこの玄関から先へは上がるなオーラ駄々漏れてるし。
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