孤独星

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栖×重信 いつも屋上で出会ってしまう ベテルギウス...男の口からまさか星の名前が出てくるとは思っても見なかった 少し驚きはしたが動じはしない 「にしても、寒いなー。栖は寒くないのか?そんな格好で」 「別に...」 温かさなんて俺には無縁の物だ 心さえもう冷め切っている 子供の頃からずっと独り 今更人肌恋しいなんて思わない 学校でも勝手気ままにやってきて元々の口の悪さがアダとなったのか、友達と呼べるやつもいない それ以前に周りには蔑まされた目で見られることの方が多い 元より戯れる気なんて俺には更々無いが だから、周りの奴らが俺の事をどう思おうがどうでもいいことだ 「そういっても、手、冷たいぞ」 一瞬触れられた手を弾く様に払い除ける 「気安く触んないでくれる?」 踏み込んで欲しくない そう思う事で壁を作るこの作業はいつもの事 けれど、この男はその壁を壊してズカズカと遠慮もなしに入って来るのだ 「でも、手を冷やすといい事ないぞー」 再び手を掴まれ、重信の白衣のポケットに手を入れられる 中にはホッカイロが入っていてすぐに温かさが手に伝わってきた 「あったかいだろ!俺の必需品だぞ」 「じじいか」 「お前、イケてる俺にじじいって...眼科いけ。眼科」 「自分でイケてるって言っても意味ねぇよ」 フフッと思わず笑みが溢れてしまったがすぐに表情を無に戻す 「ほら、早く戻れよ。また例の一年がお前探しにくるぜ」 一瞬目を丸くして「ああ、そうだな」とホッカイロを栖に渡して屋上から重信は去っていく やっと解放された そう毒づきながらも先程の重信の驚いた表情に疑問を残す 『また例の一年がお前探しにくるぜ』 『また』? 恥ずかしさに顔が熱くなる そんなつもりで言ったわけじゃないのに まるで まるであいつをいつも見てるみたいだ もっと、今より高い壁を作らないときっと戻れなくなってしまう...
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