-4-

2/26
686人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「亜優ーー。電話ーー」  階下から声を掛けられたのは、部屋で夏休みの宿題と格闘している時だった。  計算問題の途中なのに、とため息をつきながら下りていくと、リビングのローテーブルの上に子機が寝かせてあった。 「誰から?」  キッチンで炒め物をしている母に訊くと、 「章吾から」 「お兄ちゃん? ……何だろ」 「さあ。とにかく亜優を出せって。 後ろで騒いでる声が聞こえるから、まだサッカー部のみんなと一緒なんじゃないの?  ─あ、ついでに帰りが何時になるか聞いてくれる?  夕食の都合があるから」 「分かった」  受話器を耳に当てると、いきなり耳元に太い歓声のようなものが響いた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!