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「亜優ーー。電話ーー」
階下から声を掛けられたのは、部屋で夏休みの宿題と格闘している時だった。
計算問題の途中なのに、とため息をつきながら下りていくと、リビングのローテーブルの上に子機が寝かせてあった。
「誰から?」
キッチンで炒め物をしている母に訊くと、
「章吾から」
「お兄ちゃん? ……何だろ」
「さあ。とにかく亜優を出せって。
後ろで騒いでる声が聞こえるから、まだサッカー部のみんなと一緒なんじゃないの?
─あ、ついでに帰りが何時になるか聞いてくれる?
夕食の都合があるから」
「分かった」
受話器を耳に当てると、いきなり耳元に太い歓声のようなものが響いた。
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