プロローグ

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――レイコさんは、得意げに教えてくれた。 七不思議の一、【階段の女生徒】。 とある階段の姿見を、4時44分に覗くと血まみれの女生徒が映る。その姿を見てしまったものは"あちら”へと連れて行かれてしまうらしい。 七不思議の二、【体育倉庫のロープ】。 体育倉庫の中に、どことも繋がっていないロープが垂れ下がっている。もし繋がる先を覗いてしまった者は、そのロープが首に巻きつき死んでしまうらしい。 七不思議の三、【理科室のメス】。 夜に理科室の近くを通ると、足に違和感を覚える。そこには突き刺さったメスがあり、そのまま理科室から出てきた宙に浮くメスで解剖されてしまうらしい。 七不思議の四、【図書室の本】。 図書室のどこかに、題名のない真っ黒な本がある。その本を開くと中に吸い込まれて、その本の中から一生出られないらしい。 七不思議の五、【中庭の桜】。 真夜中に中庭へ行くと、常緑樹しか植えられていない中庭に桜が咲いている。その桜に近づくと魂を抜かれ、桜の養分となってしまうらしい。 七不思議の六、【屋上の遺書】。 窓の外を眺めていると男子生徒が飛び降りてくる。その男子生徒と目が合ってしまった者は、屋上に奇怪な遺書を置いて自殺してしまうらしい。 ――レイコさんは、ここまで説明を終えると、どうだ、という表情で、僕を見つめた。 「これが、この学校の七不思議だよ。どうだい少年、ワクワクしてこないかい?」 そう言われても、僕はそれほど怪談が好きという訳ではない。それどころか、少し苦手だ。――決して怖いから何て事ではなく、非現実的な話を信じられないからだ。決して、怖いからではない。 それに――僕には、ひとつ疑問がある。 「でも、レイコさん。今の話だと、七不思議なのに六つしかないですけど……」 七不思議なのだから七つはないと、おかしいだろう。当然の疑問を投げかけると、レイコさんは「良い所に気づいた」、と言わんばかりの顔で――実際、そう言った――また得意げに説明をはじめた。 ――七不思議の七、【七不思議の謎】。 この【唄寄中の七不思議】には、なぜか七つ目に当たる話がない。もし、存在しないはずの七つ目を知ってしまったら、その人は死んでしまうらしい。 「これが、“七不思議”の中で一番燃えると、私は思うよ」 レイコさんはそう言って、「ニヤリ」と笑った。
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