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「確かにお似合いなんだよなー、あいつら。
実は隠れ天然同士だから、リズムが合うんじゃね?
ツッコミ役がいないのがちょっとアレだけど、まあ、そこは必要があれば俺が後ろからスパーン、と」
楽しげな俊輔の声は、まるで知らない人のもののように遠く聞こえていた。
返す言葉を見つける気力もなく、わたしが作る不自然な間だけがその幅を広げていく。
「─どうした? 亜優」
「……」
わたしは黙って首を横に振ることしか出来なかった。
膨らんだ黒い感情は雨雲のように広がり、胸いっぱいに重く垂れ込めている。
何か言ったら、たちまち大粒の雨が降り出してしまいそうだった。
「おい。……亜優? ……おーい、亜優ちゃーん?」
俯いたまま、無理に笑顔だけ作ろうとした時、握りしめた手の甲にぽとりと滴が落ちた。
「……亜優」
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