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 台所の方からヤカンに水を注ぐ音が聞こえる。  出された座布団の上に正座したまま、わたしは俊輔の部屋をぐるりと見回した。  サッカー雑誌やファッション誌がベッドの脇に積まれ、雑然とはしているものの、わりと整理整頓はされているようだ。 「けっこうきれいにしてるね」  大きめの声で台所の方に呼びかけると、「だろー? 拓己が来るたび片付けろってうるっせーからさ」という俊輔らしい返事が返って来た。  本棚の前に置かれた芳香剤にはよく見ると『玄関用』と書かれていて、その不器用さが何だか愛おしかった。 「なにニヤニヤしてんだよ」  いつの間にか戻って来た俊輔が、部屋に入るなり紺色のピーコートをベッドにポンと投げる。
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