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「そうそう。せっかく買ったけど、結局あんまり使ってないよな。
いつぶりだっけ、ここに来るの」
「いつかなあ……。中二とか……?」
「いや、……受験の少し前、一回来てるな。
ほら、お前が章ちゃんとケンカしてさ」
「あ、……あったあった!
お兄ちゃんが隣の部屋で彼女とイチャイチャしてて、うるさくて勉強できないってわたしが泣いて。
勉強道具一式持ってここに押しかけたんだよね」
「そうそう。半べそかきながら鼻水垂らして。
あん時はめちゃめちゃ笑った」
「俊輔があんまり笑うからもうどうでもよくなって、すぐに泣き止んでここで黙々と勉強したよね。懐かしい」
今思えば、わたしがあそこまで駄々をこねたのは、受験のストレスでいっぱいいっぱいだったせいもあるけれど、
それよりも初めて兄に彼女が出来た事へのヤキモチの方が大きかったのだと
思う。
あの時俊輔が淹れてくれたカフェオレは、温かくて甘くて、ほんのり苦かった。
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