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「井上は一人で帰れるって遠慮してて、だけどよくよく聞いたらあいつん家、けっこう駅から遠くてさ。
しかも歩きだって言うし、危ないだろ。
まあ、あの二人、電車の中でもずっと音楽の話で盛り上がってたから、話し足りなかったっていうのもあったんだろうけど」
「……」
夜道を歩く二人の後ろ姿が浮かび、わたしは思わず目を伏せた。
楽しそうな拓己の笑顔を想像するだけで、胸が鈍い重みを感じる。
「─お似合い、だよね」
痛む奥歯を押すように、出来るだけ冗談めかした口調でわたしは言った。
「今日、思ったの。
あの二人、なんかいい感じだなって。
……もしかしたら井上さん、拓己のこと、……」
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