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はじめに落ちたひと粒を追うように、両目から次々と大きな粒が落下していく。
どうしていいか分からないまま、わたしはただ溢れ出していく涙を見送るしかなかった。
しばらくの沈黙の後、ゴソ、と動く気配がして、離れて座っていた俊輔がすぐ隣に並んだ。
「ごめん。俺、泣かすつもりじゃ……」
涙で濡れた手の甲に、俊輔の大きくて分厚い手がぎこちなく重なる。
わたしの瞬きと同時に、その上で色のない滴が跳ねた。
少しよれたスエットの袖口が近づいてきて、優しく頬を拭う。
「……そんなに泣くなよ。どうしていいか、分かんないだろ……」
右肩が手のひらで包み込まれたのを感じ、わたしはぴくりと体を揺らした。
少しだけ迷いを見せてから、力強い腕がぐっとわたしを抱き寄せる。
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