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 何年もの間、ずっと封じられてきた言葉を今、俊輔は口にしようとしている。  壊れてしまうことが怖くてたまらなくて、わたしはスエットをさらに強く握った。  ─もう少し、……もう少しだけ、このままでいたい。  今と同じ三人でいたい。  無邪気に通い詰めたあの海を、あの夏を繰り返すために、臆病なわたしたちは自分の想いから必死で目を逸らし、子どものふりをしてきた。  簡単なことではなかったけれど、わたしたちはそうしてここまでやって来た。  だから今まで通り、もう少しだけ気付かないふりをして、このまま─。 「─無理だよ、亜優……」 「……」  再びこちらに向けられた俊輔の目は、とても悲しげだった。
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