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「お前が拓己のために泣いたんだろ。
……もう、無理だよ。
無かったことになんて、出来ない」
「─」
込み上げる嗚咽を堪えると同時に、熱い涙が目の端から溢れた。
俊輔の瞳の中で涙を流しているのは、もう子どもの頃のわたしではない。
……本当は、分かっていた。
もう、とっくに限界だった。
わたしたちが見ないふりをしてきたそれぞれの想いは、─膨らみ、大きくなりすぎて、すでにもう、どこかに仕舞い込んでおくことなど出来なくなっていたのだ。
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