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 海のない内陸に住んでいた去年までは、こんな夏の過ごし方を知らなかった。  はじめはその広さも、押し寄せる波の音さえも怖かったけれど─。 「うん。……好きになったよ。すごく」  わたしに海の傍で暮らす楽しさを教えてくれた二人が、少し誇らしげな表情を浮かべた。 「また、来年も来ようね。みんなで」  そう言うと、俊輔は「おう」と笑顔を見せ、拓己は照れくささを逃がすように空を見上げた。  その目が眩しそうに細められる。 「─今日も、暑くなるだろうな」  早朝の涼しさを残していた日差しはいつの間にか表情を変え、じりじりと音を立てそうな真夏の色へと変わろうとしていた。
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