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 あの時、砂の上に描いた叶うはずのない三人での暮らしを、わたしはまだどこかで夢見ていたのかもしれない。  子どものままごとだと知りながら、大切な夏の思い出をどうしても手放したくなくて、わたしは拾った貝殻の代わりに、小さな心の欠片をあの場所に残して来たのだろう。  そしてきっと、それは今もそのまま置き去りになっている。  とっくに波に消されてしまった、あのまぼろしの部屋の中に。
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