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「─好きだ」
涙を流すわたしの手を握りながら、俊輔はまるで後ろめたい言葉を発するように目を伏せ、言った。
「本当は、……なんて言っていいか、自分でもよく分かんないんだ。
お前のことが大事すぎて、……好きだとか、付き合うとか……なんかもう、そんな簡単なもんじゃないんだよ。
亜優が誰を好きか、……そんなことどうでもよくて。
自分勝手だって、思うけど」
大きな手にぐっと力がこもる。
「ただ、……渡したくない。絶対に。お前を、誰にも。
─たとえそれが、拓己でも」
まるで自分の元に引き留めようとするかのように、俊輔は掴んだ手を乱暴に引き寄せ、再びしっかりとわたしの身体を抱きしめた。
髪に口元を埋め、祈るように呟く。
「もう、あの頃に戻れなくても、……何もかも全部ぶっ壊れたとしても。
俺は、かまわない。
……あとにお前だけ残れば、それでいい」
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