-2-

4/40
前へ
/40ページ
次へ
 酒井さんは咥えていたタバコを指先でつまみ、わたしから顔を背けて煙を吐いた。  白い息と紫煙が混ざり、大きな白い塊になって昇っていく。 「困った」 「え?」 「俺としては、こんな状況を目の当たりにして『じゃ、そういうことで』って爽やかに去れないよね」 「え、あ、」  わたしは慌てて顔の前で手のひらを振って、 「大丈夫ですわたし、一人でも。 遠慮なく去っていただいて」 「それはまずいでしょ。 このまま放置するのは青少年保護なんちゃら条例に反してる」 「いえ、あの、ここ家の前だし、ほんとに家族がすぐ帰ってきますからご心配なく」  一人であわあわしていると、酒井さんは可笑しそうに笑った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

658人が本棚に入れています
本棚に追加