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「あの、……髪。
拓己の髪って、きれいだよね。染めてないのに栗色っていうか……」
「まあ、確かに茶色いとはよく言われるけど」
拓己は自分の髪に指先を触れ、
「日に焼けて傷んでるし、きれいとは言われないよ」
「そんなことないよ、……わたし、真っ黒だからうらやましい。
少し色を抜いた方が大人っぽく見えるし、今度、わたしも少し染めてみようかな」
あまり考えずにそう言うと、拓己は少し眉を寄せ、こちらに手を伸ばした。
指先が髪に触れると、わたしの心臓がぴくりと跳ねる。
「黒い髪の方が、……俺は好きかな」
髪に注がれていた視線が、ふとわたしの目に移る。
何かを言おうと開きかけた拓己の唇が、迷い、そして諦めたように結ばれたのが分かった。
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