623人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
『二ノ宮って、冷たいよね』
みんなは拓己を知らない。
拓己は、本当は誰よりも優しい。
自分が周りから優しいと思われるかどうか、そこに重きを置かないだけだ。
「……ていうか」
拓己が少し訝いぶかしげにわたしの顔を覗き込む。
「なんでお前、その事知ってんだよ」
「……」
わたしは数日前に開催された『井上芹香を慰める会』のことを思い浮かべ、
「井上さんの友達が、みんなで拓己のことめちゃめちゃに言ってたから。
……冷たいとか、女の子の気持ちが分からないとか、断るにしたってもう少し言い方があるんじゃないかとか、……」
「……」
「あとは、顔がいいからって、いい気になるなとか」
「……」
「……顔がいいからって、いい気になってるの?」
「……」
拓己の手が伸びて来て、わたしのおでこをぺちっと叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!