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*** 「お前さあ……。 クラリネットの練習するために学校に向かっといてクラリネット忘れるとか ……ギャグかよ」 「……」  七月に入ったばかりの、日曜の午前。  わたしは学校の昇降口の前で小さくなって、自転車に跨った俊輔に叱られていた。  練習着姿の俊輔が、サッカーバッグの中から大事そうにわたしのクラリネットケースを取り出す。 「今日はたまたま俺が家の前を通りがかったから良かったけど。 もう絶対忘れんなよ」 「はい……」  わたしは受け取ったクラリネットケースを抱きしめ、しょんぼりしながら「スミマセン」と頭を下げた。
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