623人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの……おめでとう」
「サンキュ」
じわじわと嬉しさが込み上げ、わたしは俊輔の手を取った。
「おめでとう」
「ありがとう」
「おめでとう」
「だから、ありがとうって」
嬉しさのあまり手元が留守になり、滑り落ちそうになったクラリネットケースを俊輔が「あぶねっ」と器用にキャッチした。
「ほら、だから気をつけろって……」
言いかけてわたしの顔に目を留め、困ったように笑う。
「泣くなよ」
「……だって……」
鼻を啜り、目元を擦りながら、
「俊輔、……がんばってたから……」
「うん」
「……よかったね……」
「うん」
「よかった……」
俊輔は笑い泣きするわたしの顔を嬉しそうに見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!