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「あの……おめでとう」 「サンキュ」  じわじわと嬉しさが込み上げ、わたしは俊輔の手を取った。 「おめでとう」 「ありがとう」 「おめでとう」 「だから、ありがとうって」  嬉しさのあまり手元が留守になり、滑り落ちそうになったクラリネットケースを俊輔が「あぶねっ」と器用にキャッチした。 「ほら、だから気をつけろって……」  言いかけてわたしの顔に目を留め、困ったように笑う。 「泣くなよ」 「……だって……」  鼻を啜り、目元を擦りながら、 「俊輔、……がんばってたから……」 「うん」 「……よかったね……」 「うん」 「よかった……」  俊輔は笑い泣きするわたしの顔を嬉しそうに見つめていた。
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