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***
─なんだろう、この音……。
浅い夢の中で、わたしは両耳をふさいだ。
目覚ましのアラーム?
まるで、救急車のサイレンみたいな……。
─近づいてくる。うるさい。すごく、嫌な感じ……。
徐々に覚醒していく意識の中で、その音が唐突に鳴り止んだ。
「……ん……」
眩しさに顔をしかめながら薄く目を開けると、部屋の電気が煌々と点いていた。
ベッドの上でうたた寝していたらしいことに気付き、頭上の目覚まし時計に目をやる。
─十一時……。
なんだ……。俊輔、結局来なかったんだ……。
わたしは体を丸め、もう一度目を閉じた。
窓の外から雨音は聞こえない。
さっきまで激しく降っていた雨はもう止んだようだ。
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