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「─事故、だったんだよ」
校庭をスケートリンクのように輝かせていた照明が消され、外は暗闇に包まれていた。
教室の窓にわたしたちが並んで映っている。
もうこの世界にはいないはずの俊輔の姿も、わたしの隣にはっきりと。
「あの日、俊輔を待ってるうちに、わたし部屋で寝ちゃって……。
夜中にお兄ちゃんに起こされて、知ったの。
俊輔が事故に遭ったこと」
「……事故、かあ……」
俊輔がしきりに首を傾げる様子を見て、
「その時のこと、……覚えてないの?」
「うーん……」
腕を組み、記憶を探るように視線を斜め上に上げる。
「分かんね。なんか、その日のことが全体的にぼんやりしてるんだよなあ」
「……」
良かった、と思った。
せめて『その時』の苦しい記憶が俊輔の中に残っていなくて、良かった。
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