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「お前の部屋に行く約束をしてたことは、何となく覚えてるんだよな。
その前にチャリでコンビニに行こうとして、……それから……」
「……」
「─ダメだ。やっぱ思い出せないわ」
そう言って息を吐き、口元を曲げる。
俊輔は考え込む時、よくこの顔をした。
見慣れたその横顔をぼんやり見つめていると、ふと目が合った。
「ごめんな、亜優」
「え?」
「あの日、約束してたのに、すっぽかして」
「……」
わたしは黙って首を横に振った。
こんな時でも約束を気にする俊輔が愛おしく、哀しかった。
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