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胸が苦しくてたまらなくなって
私は孝之の病室には行けずに
そのまま階段を登って
屋上へと向かった。
ゆっくりと扉を開くと
そこには夏の焦げるような
陽射しが降り注いていて
その眩しさに目が眩む。
彼が背中を抱いてくれた
手すりの前で歩みを止め
どこまでも青い空を見上げた。
このお腹に…
彼の子供がいない事を知ったら
聖はどんな反応を示すのだろう。
その時、彼の表情を
しっかりと私は見極めなくては
ならないかも知れない。
もしも彼が生きる選択をした理由が
私のお腹の中に
いるかもしれなかった
子供だったとしたら…
この事実を知った時、
それでも彼は生きる選択を
変えずにいてくれるだろうか?
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