現実逃避

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「此処、か......」  青色の屋根、白い壁、そして二階建ての一般的な家に着いた彼は、未だ微かに感じるだけの気配を不審に思いつつ、左側の庭の方へと足を進める。  少し進んだところで、ぷつりと気配が消えたことが分かった。先程まであったはずのモノが、完全に無くなってしまった。 「ったく、どういうことだよ......」  大抵の霊は居場所がはっきりと分かりやすい。そして、霊は一瞬姿を消しても一つの場所に居続けるという特性を持っているのだ。  だが、先程まで居た“霊”はあの世に逝った訳ではなく、“消えてしまった”のだ。
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