死の向こうには

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真っ白な部屋で、真っ黒な男が、朗らかに笑っている。 顔立ちが整いすぎていて作り物をみているような気がしてきた。 「本来、キミが願っただけなら僕にその声は届かなかったろうね。ただの人間の声なんか聞く価値もないからさ」 朗らかな笑みとはそぐわない、悪意が形をとったような声に、背筋が震える。 怖い。この真っ黒な男が、私はなによりも怖かった。 「でもね、この世界の人間ではないんだけど、人間には過ぎた力を持った少女がね、願ったんだ。強く、とても強く。自身の命に代えてでも」 「……なんの力も持たない、平凡な人間になりたい、と」 恐怖に慄きながらも、男の話を懸命に聞いていれば、私がここにいる原因は、その力とやらを持っている少女が願ったことらしい。 目の前にいる男がどういう存在なのかはわからないが、その願いを叶えるために、条件に合う人間を探し、運良くか運悪くかは定かではないけれど、ヒットしたのが私だった、ということだろうか。 「苦労したんだよ、願いを聞いてあげようと思ったんだけど、僕は契約を基にしないと力を発揮できない生き物でさ」 「つまり、何の力も持たない少女の肉体、なんて、僕には用意できなかったのさ」 あぁ、段々目の前の男が何であるか、わかってきた気がする。 でも、それを認めてはいけない気もしている。 私の何かが、警告を告げている。 目の前の人間の容を真似たナニカは、危険すぎる、と。
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