プロローグ

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靴箱を開けると、今日は普通に靴が入っていたものの、何故か水でぐっしょりな上に溝鼠が数匹干からびて死んでいた。 あぁ、通りで臭いと思ったわ。 こういうとき、割と本気で思う。 あーあ。魔法が使えたら、一瞬で片付けられるのに。 これはどうせ今片付けても帰る頃に汚されるのは目に見えてるので、そのまま放置で、プレートのない適当な靴箱から綺麗な上履きを取り出して履き替える。 今まで履いてた靴は砂を落として鞄にしまう。 まぁ、あの死骸がのってる上履きは私のものじゃないので支障はない。 誰のかといえば、クラスメイトのだれかのもの、だ。 クラスメイトの名前なんか覚えてないし、いじめるくらい嫌いな奴に名前を覚えてもらっても嬉しくないに違いない。 そう、私はいじめられている。 いじめとは、主観で当人がいじめられていると感じれば、いじめなのだそうだ。 だからこれはいじめだと思う。 とはいえ、私自身に何かされるのは靴箱だけなのだ。 教室についてしまえば、徹底した存在無視。 点呼で名前を呼ばれることもなければ、プリントも回ってこない。 いじめられていると言っても、割と実害がないので本当に億劫なだけなのだ。 一日中、声も出さずにいるというのは案外鬱々とするもので、だから私はずっと妄想にふけっているというわけだ。
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