死の向こうには

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「…ん、んん…?」 目を覚ます。 意識を失う前の記憶が一気になだれ込んで来て、頭痛が私を襲ってきた。 見知らぬ場所に寝転んでいるのも微妙なので、無理やり体を起こしてみる。 …体の痛みは、嘘のように消えていて、頭痛だけが私を苛んでいる。 額に手をあてて唸っていると、頭上から声が降ってくる。 「ようこそ、お嬢さん。契約は成された!」 「……は?」 これは何なのだろう。 思考している時点で、私が生きていることには変わりない。 だが、契約って何。 今流行の魔法少女か、魔法少女なのか。 ちなみに私は個人的には黄色が好きだ。 と、現実逃避はこのくらいにして。 「おや、お嬢さん、キミは願ったじゃないか。異世界にいきたい、と」 「……ちょっとまって、意味が…」 痛む頭を抑え、ふらつきながら立ち上がった私に手を差し伸べている男をまっすぐに見据えた。 人間では有り得ない、血のような瞳に、闇を吸い込んだような黒髪。同じ黒髪でも私のものとは大違いで、こういうのを鴉の濡れ羽色、とでも呼ぶのだろう。 背は高く、180センチくらいあろうだろうか。 服装は白いカッターシャツに黒いズボン、黒いブーツ、黒い手袋に黒いコート。 全体的に真っ黒だ。 そこで、漸く自身の居る場所へ思考が及ぶ。 真っ黒な男とは対照的に、真っ白な部屋。 よく小説とかの召喚や錬金術の真理のいたりする白い空間とかではなくて、白い壁紙に白い家具で構成された、白い部屋。 そして、扉はないようだ。 どうやって入って、どうやって出るつもりなのか。
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