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「ん? 飛鳥......じゃなくて、犬っころか」
椅子の背もたれに寄りかかり、腕組みをしている月影さんは、俺を見てそう言った。
俺は俺だけど、“俺”じゃない。
『私はそのような名前で呼ばれるような姿をしておらん』
表だったコインが裏返ったように、俺の魂と戌神さんの魂が入れ替わっている。
つまり、俺の体の主導権は戌神さんってことだ。
「まぁそうだろうな。で、なんで入れ替わったんだ?」
主導権が戌神さんでも視覚や聴覚は共有されているみたい。そういえば、俺が主導権でも戌神さんは見えたり聞こえてたりしていたんだよな。
『ふん......。人間が食べる物に興味がある。今までは拒んでいたが』
「ってことは、味覚は別々だったんだな」
恐らく、俺が“美味しい”と思う前に味覚を別々にしていたから、美味しいとかも思わなかったことだろうか。
ん? 俺が寝てる時に怖い夢を見てたっていうのは......何となく察した。
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