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「覚悟しろよーークソガキ」
紅黒い鎖が地面から四本出現し、月影の周りを囲むと、両手両脚に巻き付いた。
すると鎖からだろうか、真紅の焔が溢れ、月影の身体を包んでいく。
ただ呆然と立ち尽くすことしか出来ない子供は、その焔を見て思った。
ーー煉獄の焔と。
月影の身体は焼け焦げることなく焔が一瞬で消えると、そこには異形の姿があった。
漆黒の体躯に紅黒い鎖が絡まり、二又の尻尾をうねらせ、牙を剥き出した狼が子供を睨んでいた。
『“執行人”って鬼だけになるかと思っていたよ』
「オレは変わり者でね。そんじゃ、さっさと片付けますか」
狼ーー月影はニヤリと笑うと、反動をつけて一気に走り出した。
あまりの速さに子供は姿を消すことが出来ず、咄嗟に防御体勢をとった。
今にも呑み込まれそうな恐怖感が全身に纏わり付く。
子供は初めて怖いと思い、喰われるのだと覚悟した。
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