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乾いた音が響いた。
飛鳥の手を払い除けた小さな手は、微かに震えていた。
『......そんな目で見ないでほしいなぁ。気持ちが悪い』
子供は飽くまで冷たく振る舞った。
紅い目に涙を溜めながら。
「飛鳥君」
白蓮は全てを知っているようなあの眼差しで、真っ直ぐ飛鳥を見つめた。
また夜風がするりと抜けていくと、ゆっくり口を開いた。
「この子は、“囚人”ではありません。生まれ変わるべき“善人”です」
「えっ......」
『......』
沈黙が流れる。気が付けば何処からか虫が鳴き始めていた。
暫くして白蓮が再び言葉を紡ぎ出す。
「この子は“囚人”の魂に呑み込まれてしまった、普通の幽霊なのです。月影が鎖をこの子に巻き付けた時、障気だけが消えたので違和感を感じました」
「あー、だからコイツ消えなかったのか? さっき使ったのは囚人しか効かねぇからなぁ......」
いつの間にか元の忍者姿に戻っていた月影がボソッと呟いた。
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