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囚人は人間の体に憑依し、人間の魂を喰らい尽くすというのが一般的である。
だが、今目の前に居るのは囚人に憑依された子供の“幽霊”で、魂は喰われてなかった。
「何で囚人に憑依されちまったんだ?」
『......ぼくは自分から囚人に憑依されたいと望んだ。囚人と一体化になれば、家族は助かるって。でも、ぼくが喰われたら泣くんじゃないかって、必死に喰われるのを拒んだ』
涙が溢れても淡々と話す子供の幽霊は、とても意志が強いのだと飛鳥は思った。
なんとなく察した彼は、確かめるようにゆっくり訊ねる。
「俺の魂を喰えば、自分は消えないと思ったのか?」
『......お兄ちゃんみたいな綺麗な魂を喰えば、囚人に憑依されていても自我は消えることがないって、あの人がーー』
黒いシミが真っ白な着物に滲む。
ぽつりぽつりと、雨のように染みて。
子供の目が揺れる。
絶望へと変わる瞬間。
黒いシミは広がり続け、触ろうとしても黒い障気が許さない。
ーーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
子供の叫びがこだまする。
そして、闇に呑まれーー消えてしまった。
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