凍える夜に

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真理沙はドアが開いて入ってきた男の姿を認めた瞬間、何故かぐらりと視界が揺れた気がした。 そんなに動揺しなければいけない理由はない。 でも門倉の後ろからのそりと入ってきた背の高い男を見た途端、自分でも説明がつかないような心のざわつきにおそわれた。 真理沙は瞬時にその反応を押し殺して平静を装った。そのざわつきが真理沙にとって好ましい物なのか不快なのかよくわからなかった。 その不可解な震えは真理沙に警戒心を呼び起こした。 「どうも。遅くなっちゃって。」 門倉は真理沙に向かって言ってから奈央の方に笑いかけた。 「はじめまして。門倉です。」 「はじめまして。関口です。」 奈央が門倉に続けて連れのその男性にも名乗りながらとびきりの笑顔を向けた。 「どうも。坂本です。はじめまして。」 真理沙は初めてその男が坂本という名前だと知った。
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