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噂をすれば……
莉乃はリフレッシュに入ってきてランチのトレイを取ろうとしている荻野に気づいた。
やっぱり実際目で見るとあっぱれなんてとんでもない。流れだかなんだか知らないが虫酸が走る。
聞くんじゃなかった。
荻野が涎を垂らさんばかりの恍惚の表情を浮かべながら、あの軟体動物の触手を思わせる腕を愛美の張りのある肌に這わせているイメージが浮かんでしまった。
足元から脳髄にかけて泡立つような怖気が走った。
「期待してなかったけどけっこう良かったですよ~。うふふ……」
目ざとい愛美は莉乃とほぼ同時に荻野に気づいたらしかった。その事を思い出しているのかとろりと欲情したような目をして唇を舐めている。
「磯谷さんも変な先入観捨てた方がいいですよ。男なんて味見してみたら病みつきになりそうなお宝だったなんてことがあるんだから。」
「それでも私、荻野さんは遠慮しとく。」
「えー?そんなの食わず嫌いですよ~。彼、あの手この手で眠らせてくれなくてぇ。エヘッ。すごく良かったのぉ。」
吐き気がしてきた。そもそもランチ中になんて会話をしているんだ。愛美は。
莉乃はさっさと片付けて歯磨きをしに行こうと思った。
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