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夜更けに香織は和志の腕を抜け出した。
和志はすぐに気づいたが香織の表情に声をかけるのが躊躇われた。
香織は窓辺に置いたテーブルの引き出しをそっと開けて何かを取り出した。そしてその何かをしばらく眺めてから元の引き出しにしまった。
和志の胸を痛みが刺した。えぐられるような深い傷がぱっくりと口を開けた。
香織は泣いていた。静かに。声を殺して。
わずかな月明かりでさえ香織の頬を伝う涙の筋がはっきり見て取れた。
和志の胸に開いた傷口から絶望と無力感が滲んで和志の体を冷やしていった。
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