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北へ向かう航空機の窓側のシートに深く身を沈めて目を閉じた。
幸いなことに機内は空いていて隣は空席だったし騒ぐ子供もいなかった。
(こじ開けることは出来なくても開いたのは分かるんだよ……)
香織の変化はすぐにわかった。その変化をもたらしているのが誰なのかも。
否定しようと楽観的に考えてもみた。何度も何度も否定した。受け入れられなかったから。
それでも次第に確信した。
香織は勇人に会っている。
ある晩、帰宅が遅くなった香織の満たされた顔を盗み見た。香織にあんな至福の表情を浮かべさせることが出来るのは勇人しかいない。
それからは否定するのは止めた。
勇人だと認めればすべてが符合する香織の変化。
それでも和志は追及しなかった。追及出来なかった。香織を失いたくなかったから。
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