動揺

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「あれ?松本さん?」 駅のホームでぼんやりしていたところを背後から声をかけられた。振り返った莉乃は予期せぬ遭遇に驚きつつも歓声を上げたくなった。 「上村課代!」 思わず声が弾んだ。送別会以来、笑顔で挨拶は交わすものの会話らしい会話はしていない。 莉乃は上村課代が莉乃の名前を覚えていて呼んでくれたことだけでも嬉しかった。 「こんなところで会うなんて珍しいですね。外出?」 「はい。午後から本社で研修なんです。」 眠くなること必至の退屈な研修に向かうのがたまらなく憂鬱だった。どうせなら朝から終日なら直行直帰出来たのにと恨めしく思っていた。さっきまでは。 「じゃあ途中まで一緒に行きましょう。」 上村課代と一緒になるなんて。心の準備というものが必要なのに!莉乃は舞い上がる反面、ちょっと緊張してきた。
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