夏のはじまり

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前期の試験も終わると大学は長い休みに入る。 交通費も無駄に感じたしバイトもいくつか掛け持ちしていたので和志は帰省する気がなかった。 母親は電話してきていつ帰って来るかと聞いてきたが、そのたびにのらりくらりとごまかしていた。 バイトや交通費のことは嘘ではないが帰りたくない理由は別にあった。 試験期間は自制していたこと、遊びやサークル活動なんかに心おきなく没頭できる。 開放感と始まったばかりの夏。 何もない地元に帰る気なんてさらさら起きなかった。 でももっとはっきりした理由が別にあった。 つい最近知り合ったばかりの女の子。ふと気づくと彼女のことばかり考えている。 こんな気持ちは初めてだった。
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