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急に自分がどこにいるかに思い当たってそわそわした。成沢の家に上がったことはない。
「何してんの?ちょっと上がって待ってて。すぐだから。」
成沢が言った。
「う…ん。おじゃまします。」
小さく呟いて靴を脱いであがった。部屋に上がっても身の置き所が無くて落ち着かなかった。
あまりキョロキョロするのもどうかと思いつつ、つい視線をあちこちと巡らせてしまう。
男の部屋に上がったことなんかないと言いたいところだがそれは白々しい嘘だ。
あまり自慢出来たものではない経験上の知識から言えば男の部屋にしてはそこそこきちんと片付いていると思った。
玄関を上がったところは左右両側と正面に3つドアがある狭い空間になっていた。
正面のドアを開けるとリビングだかダイニングだかになっているようだ。
成沢は奥に戻っていった。正面のドアは開けてあったが中まで入るのは気が引けて狭い空間に立ったまま待っていた。
「中入んなよ。」
成沢が不思議そうな顔をして言った。
「いいよ。ここで待ってる。」
私は正面のドアのほうをちらっと見てから言った。
「外から見るより意外と使い易そうな部屋なんだね。」
「うん。まあね。」
成沢は部屋の中をあちこち移動しているようだった。
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