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「あった!そうか、こんなところに置いちゃったのか。」
成沢は独り言を言った。
「お待たせ。じゃあ行こうか。」
私は立ち上がって玄関に行き靴を履いた。成沢も私の後から出てきて鍵を閉めた。
「悪い。鍵が見つからなくて。」
成沢は言った。
「行こう。」
私は先に通路を歩きはじめた。階段を下りて外に出ると外気はひどく冷たくて一気に凍えた。
それでも成沢の部屋の中にいると成沢の匂いに包まれているようで…体臭ではない。そんな感覚がするだけだが。
外の冷たい空気を思い切り吸い込んで頭の中をリセットした。とたんに体がぶるぶるっと震えた。
「犬みたいなヤツだな。」
成沢がクスリと笑って言った。
「飯食ってないでしょ?」
「うん。」
私は手袋をしながら返事した。
「どこかで食べて行こう。腹減った。」
「いいよ。」
私達はとりあえず駅の方に向かって歩き出した。駅に着いてもまだ19時前だった。
「まだ初詣には早過ぎるな。」
成沢が言った。
「ここでいいか?」
成沢は駅前の居酒屋ビルの前で言った。今やあまりいい思い出とは言えない思い出の場所。
「うん。いいよ。」
ほかにちょうどいいところも思いつかなかったのでそこ
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