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「二番目のお兄さんのご夫婦って仲良さそうだね。すごい幸せオーラが。」
春香さんの夫を見つめる眼差しが印象的で心に残っていた。
「大恋愛だったらしいよ。おかげで大騒ぎ。俺はよくしらないけど大変だったみたい。」
成沢は言った。
「大騒ぎ?」
「うん。詳しい事情は知らないけど兄貴が医者にならずにシェフになったのには春香さんと出会ったことも関係あるらしくて。」
「そうなんだ。」
「それに兄貴は当時別の人とつき合ってたし。周りはその人と結婚するものと思ってたんだよ。」
「別の人…」
「そう。だからうちの親も初めはあまりよく思ってなかったみたいだよ。春香さんとの付き合い。」
意外だった。
人には歴史があるものだ。さっきの二人からはそんな波乱のイメージは想像がつかなかった。
幸せオーラが結晶化して二人の周りだけに霧のように漂っているように見えた。
でもその陰で静かに泣いた人もいたのかもしれない。人のめぐりあいや運命にはいろいろな色合いがあるものだ。
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