12.帰り道

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「遅くなっちゃったな。もっと早く帰るつもりだったんだけど。大丈夫?」 デジタル表示はちょうど「21:00」を指していた。 「私なら大丈夫だよ。」 意外なことに私より成沢の方が帰宅時間を気にしていた。もちろん私を気遣かってのことだ。 「遅いから休憩は一回くらいにして、渋滞がなければ2時間くらいでつけると思うけど。」 「大丈夫だよ。うちは。」 「23時くらいには着けると思うんだ。」 「うん。焦らないでも大丈夫だから。」 成沢はこういうところで気を遣ってくれるのはうれしい。 「まあでも一人暮らしってわけじゃないし。両親と住んでるんだからあんまり遅くならない方がいいよ。」 自分に言うみたいに言った。 途中のサービスエリアでコーヒーを飲んだ。成沢は首と肩をぐるぐる回していた。 「疲れたでしょ?」 私は聞いた。 「ちょっとね。そっちこそ。」 成沢はあくびを押し殺した私を見て言った。 「うん。ちょっとね。まあ運転してるわけじゃないから。」 私は言った。 「そろそろ行こうか。」 車に戻るとさっき買ったブラックミントのガムを成沢に渡した。 「ありがと。」 成沢はガムを口に入れて言った。 「眠かったら寝て構わないよ。」 「ううん。眠くない。平気。」 初めはそう言ったものの途中で眠くなってきた。ガムを口に放り込んで今朝からの事を考えた。
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