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「遅くなっちゃったな。もっと早く帰るつもりだったんだけど。大丈夫?」
デジタル表示はちょうど「21:00」を指していた。
「私なら大丈夫だよ。」
意外なことに私より成沢の方が帰宅時間を気にしていた。もちろん私を気遣かってのことだ。
「遅いから休憩は一回くらいにして、渋滞がなければ2時間くらいでつけると思うけど。」
「大丈夫だよ。うちは。」
「23時くらいには着けると思うんだ。」
「うん。焦らないでも大丈夫だから。」
成沢はこういうところで気を遣ってくれるのはうれしい。
「まあでも一人暮らしってわけじゃないし。両親と住んでるんだからあんまり遅くならない方がいいよ。」
自分に言うみたいに言った。
途中のサービスエリアでコーヒーを飲んだ。成沢は首と肩をぐるぐる回していた。
「疲れたでしょ?」
私は聞いた。
「ちょっとね。そっちこそ。」
成沢はあくびを押し殺した私を見て言った。
「うん。ちょっとね。まあ運転してるわけじゃないから。」
私は言った。
「そろそろ行こうか。」
車に戻るとさっき買ったブラックミントのガムを成沢に渡した。
「ありがと。」
成沢はガムを口に入れて言った。
「眠かったら寝て構わないよ。」
「ううん。眠くない。平気。」
初めはそう言ったものの途中で眠くなってきた。ガムを口に放り込んで今朝からの事を考えた。
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