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成沢の実家に着くまでは本当に楽しかった。ゴキゲンなデートだった。
あの緊張と詐欺行為をしているような罪悪感さえなければ。
成沢はほとんど紳士的とさえ言えた。
かっこよくてセンスがよくてやることなすこといちいちスマートで。細かい気遣いもしてくれて。
私にはもったいないような男。普通なら私なんかに目もくれないような男。
考えてみれば何故私なんかを連れ回す必要があるんだろう?
彼の会社での様子は知らないが女に不自由するタイプとは思えない。
偶然知り合った私が家も近くだし都合がよかったというだけだろう。
暇つぶし?近くて便利?
「コンビニか…」
自嘲気味に思った言葉だったが実際に口に出していたようだ。
「え?コンビニ?何かいるの?」
成沢はびっくりしたように私の方を見た。高速走行中だ。戸惑っているに違いない。
「違う違う。ちょっと考え事してたの。ごめんね。」
私は慌てて言った。
「なんかいるなら次のサービスエリアに寄るけど。大きいとこってもうないからな。おりた方がいいかな?」
「おりなくて平気。何も買わないから。コンビニに寄りたいとかじゃないから。ごめん。」
「じゃこのまま行くよ。トイレとか行きたくなったら教えて。」
「うん。ありがとう。大丈夫。」
バカバカバカバカ…
なんで頭に浮かんだことを呟いてしまうのだろう。この癖を何とかしなきゃ。
自己嫌悪。助手席の窓に映る自分の顔を恨めしげに見た。
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