12.帰り道

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「なんとかセーフかな?」 成沢は「23:02」というデジタル表示を見ながら言った。うちのマンションのエントランスの脇だった。 「大丈夫だよ。全然。」 私は言った。今朝ここを出発したのは半日以上前だ。ずいぶん密度の濃い一日だった気がする。 「ありがとう。運転疲れたでしょ。すごく楽しかった。」 実際疲れたけれど楽しかったのは本音だ。 「クルマ好きだから運転は苦にならないよ。渋滞もなかったし。」 成沢は後ろを向いてバックシートから紙袋を取って私に寄越した。次兄の店で渡された土産だった。 「はい、これ。」 「ありがとう。」 私はシートベルトを外してドアに手をかけた。 「本当に今日はありがとう。また…」 また来年、と言おうとした。 「あのさ、初詣行かない?」 成沢が私を遮って言った。 「え?」 「初詣。」 「いいけど…」 正直若干戸惑っていた。成沢は何故私を誘うのだろう。 「家族で行くとか?それかなんか予定あるとか?」 私の歯切れの悪さを感じたらしく成沢が聞いた。 「ううん、予定はない。いいよ。行こう。」 成沢と初詣に行くのに異存があるわけではない。もちろん二つ返事でOKだ。 「じゃあ大晦日の夜から行こう。電話する。」 「うん。わかった。じゃあね。ありがとう。」 車を下りて小さく手を振った。 「おやすみなさい。」 成沢も軽く手を振って走り去った。
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