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電車内でも混雑がひどくなるにつれ勇輝は私をかばうように盾になってくれた。
「ああ眠い。眠くない?」
私はあくびを噛み殺しながら言った。今日から早速年始の挨拶回りのスケジュールがいっぱいだろう。憂鬱だ。
「眠っていいよ。」
勇輝は自分の胸に私の頭を寄せた。微かにいい匂いがした。何だろう?私は知らないブランドだが勇輝の匂いだ。
勇輝の胸に頭を預けて静かに目を閉じているとなぜかすごく穏やかで落ち着いてくる。
ずっとこうしていたい。何も考えずにこの心地良さだけを感受して浸っていたい。そんな風に思っていた。
車内はピーク時の90%位の混雑な気がした。まだ正月休みをずらして取る人もいるのかもしれない。
もうすぐ終点というあたりで勇輝が言った。
「今日帰り何時頃になりそう?」
「うーん。残業にはならないと思うけど。わかんない。」
実際行ってみないとなんとも言えなかった。
「わかったら連絡して。帰れたら一緒に帰ろう。俺は今日は仕事始めで本格的なのは明日からだから。」
「うん。わかった。」
電車がホームに停車して乗客が流れ出した。私と勇輝も中央コンコースで手を振って別れた。
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