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勇輝の部屋のインターホンを押した。鍵を開けて入れば済むことだがいつも呼び出していた。
無言で静かにドアが開いたので部屋への階段を上っていった。
部屋のドアの前に立ってもう一度深呼吸してからチャイムを鳴らした。
勇輝の家を訪れるのにこんなに緊張しているなんて…そう思っているとガチャリと鍵が開いて無表情な勇輝が私を見下ろした。
私は黙ったままそんな勇輝をじっと見ていた。近寄りがたい表情。でもやっぱりすごく好き。
「入れよ。」
しびれを切らしたように勇輝が言った。
「うん。」
私は玄関の中に入った。
勇輝の後についてリビングに入った。
「あ…」
いつもの勇輝の部屋とは違った。そう。何かが香る。勇輝の部屋はふだんこんな香りはしない。
「これって…」
私は呟いた。
「好きなんだろ?これ。」
鼻孔をくすぐる甘酸っぱいベリー系の香りのキャンドルがたかれていた。
二人で買物した時に私が欲しいと言ったがその時は買わなかったものだ。
「俺には甘ったるいけどな。リラックスするって言ってたじゃないか。」
「勇輝…」
勇輝に駆け寄り抱きついた。
「ありがとう。」
涙がじわっとわいてきた。
「ごめんね。」
勇輝にさらにぎゅっと抱きつく。
「大好き。」
勇輝の薄いシャツを通して骨っぽい体を感じた。
(ああ本当に大好き…)
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