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車に乗り込むまで勇輝はほとんど何も話さなかった。
「ありがとう。迎えに来てくれて。」
助手席のシートベルトを締めながら私は言った。
「迎えに来なくてもよかったみたいだな。来ない方がよかったって言うべきか。」
勇輝は表情一つ変えずにそう言った。
「そんなことないよ。来てくれるなんて思ってなかったけどすごくうれしいよ。」
勇輝の当てこすりは無視してそう言った。
その後も家に着くまで勇輝はほとんど何も話さなかった。
走り出してすぐは私からたわいない話を話し掛けてみたが気のない返事が返ってきてすぐに会話が終わってしまった。
勇輝が安藤さんのことで怒っているのは嫌というほどわかった。
私のマンションの前で車は止まった。
「ありがとう。」
この空気をなんとかしたかった。何か言いたくてシートベルトを外さずにそのまま座っていた。
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