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「どうして?どうしてこんなことするの?」
私は涙を拭いながら言った。
「ヤリたいからに決まってんだろ?疲れてるだろうから明日まで我慢しようと思ってたけど抱く気も失せた。降りろよ。」
勇輝はトランクを開けて運転席から出てスーツケースを下ろした。
私はショックでぼうっとしながらも車から降りた。
「勇輝。」
私の方を見ようともしない勇輝に向かって声をかけた。
「こんなの嫌だよ。私だってずっと勇輝に会いたかったのに。ひどいよ。」
口に出してみてどれほど勇輝を求めていたのか気づいた。勇輝に優しく包まれたかった。
私はそっと勇輝の腕に触れた。
勇輝は空いている方の手で静かに、でも有無を言わさない調子で私の手を除けた。
「二股かけられるなんて嫌だね。」
「二股なんてかけてない!」
「かけてんだよ。たとえお前にはそんなつもり無くても。結果的には二股なんだよ。お前、隙だらけだもんな。軽すぎ。」
「隙だらけって…」
涙が溢れてきた。確かにそうかもしれない。
「だから寄ってくるんだよ。ああいう男が。」
勇輝の目には軽蔑するような色が浮かんでいた。
「勝手にやれば。俺は二股かける女はもう勘弁。」
勇輝はトランクをバタンと閉めるとさっさと運転席に戻りすぐにエンジンをかけて行ってしまった。私は虚ろな目で去っていく車を見送った。
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