27.二股

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涙がまたジワッと湧いてきた。でもこんなところで泣きじゃくるなんてみっともない真似は出来ない。 大きく深呼吸をしてスーツケースを引いてエントランスに入った。 (とりあえず入浴してさっぱりしよう。考えるのはそれから…) 「ただいま。」 玄関を開けて声をかけた。 「おかえりなさい。」 母に続いて父までが珍しく出迎えに出てきた。 「おかえり。疲れたでしょう?どうだった?楽しかった?」 母は話を聞きたくてそわそわしているように見えた。 「疲れた。」 靴を脱ぎながら言った。早く靴を脱ぎたかったから開放感にホッとした。 「荷物とりあえずここに置いたままでいい?すぐにお風呂入りたい。」 「いいわよ。ゆっくりしてきなさいよ。」 本当は早く娘の話を聞きたいに違いない。でもバスタブに浸かって気持ちを落ち着けたかった。父母の顔を見るとちょっと胸が痛んだ。 服を脱いでバスルームに入った。入浴剤は入っていなかったのでお気に入りのオイルをたらした。 体と心の凝りが解れていく気がする。そのままうとうとしてしまったらしい。 「起きてる?寝ちゃだめよ。」 浴室のドアの外から母に声をかけられて目が覚めた。 「ありがとう。」 重い体を持ち上げてバスタブからあがりシャワーを出した。
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